娘は身近な人たちの影響もあり、小さい頃からやりたい事が決まっていて
(途中ドラマの影響で航空管制官カッコいいなんて言った時期もありましたが笑)
方向性も主人のお眼鏡に叶うものだったため、精神的にも金銭的にも最大のサポートをしてもらい、そして娘もそれによく応え、親としては応援に徹すれば良かったので、随分と楽な子育てをさせてもらったと思います。
浪人中はもちろん苦しいこともたくさんありましたけれど、脇目も振らず目標に向かう人というのはとても強いもので、親が不安になっていたら娘に申し訳ないと思えるほど、その道筋は一直線でした。
晴れて合格して喜んだのもつかの間、入試の時にはそれなりの順位だったにも関わらず、必死の浪人が必要だった娘と、現役で入った同期の地頭の良さと自己管理能力の間には超えられない大きな壁があり、何をやっても全然パッとしない成績で、自分はポンコツだと、日々弱音を吐いている状態です。
それでも勉強を続けられるのは、本当になりたい職業があるから。
そこが曖昧だったらきっと乗り越えられないほどに、医学部の勉強は厳しいです。
一方の息子は。
父親が望んでいるし、お姉ちゃんもそちらに行ったし、安定してるし社会的な信用もあるし収入も良いらしいし、と何となく志望を決めていました。
いや、違う。
それ以外を選べないような空気が家庭の中に充満していました。
自分は医師には向いていないと(まあ、それだって何を根拠に?って話なんですけど)思うのに、やっぱり医学部にいったほうがいいのかな?お姉ちゃん、あんなに苦しそうのなのにな。自分があんな風に頑張れると思えないのにな。でも何をしたら良いのか分かんないけど。収入が高い職業ならOKしてもらえるのかな?じゃあパイロットとか?無理かw ほんとは音楽で食べていけたら幸せだけど、いくらガキンチョな自分でもそれは流石に無謀だとわかるしな。勉強しなきゃいけないのは分かってるのに、目標がないってダメダメだよな。
あーーーーーーーっ!!!
もうどうしたら良いのか分かんねーーーーーー!!!!!
というのが高2の一年間の息子の葛藤でした。
勉強しなきゃと思っているのは伝わってきていました。
でもまだまだ自分に甘く幼いので、つい楽しいことに時間を浪費してしまい、そんな自分に嫌気がさしていることも、だからイライラとした態度で周りに当たってしまっているのも、痛いほどに伝わってきました。
この子はなぜ頑張りたいのに頑張れないのだろう?
よくよく考えたら、それはスタート地点が間違っているからでした。
自分は何をしたいのかな?
何になりたいのかな?
雑音を全部取り払って、正直に自分の心に問うた事がなかったのだと思います。
そして、そんな環境にしてしまったのは親のせいでした。
主人は、やりたい事が決まっていないなら大学になどいく必要はないし、行かせるつもりもない。金も払わない。資格を取るのは最低限。やりたい事があるなら資格を取ってから考えれば良い、という考え方の人でした。
まあ正論と言うか、そりゃそうなんだけど。
その有無を言わせない父親の態度、生来優しくて、ママが喜ぶことを一番に考えてしまうような性質の息子は、先ず親が納得する進路は何だろう?ということから志望を考えてしまう子になっていました。
私はそれに気付いた時、息子に申し訳ないことをしたと、心から反省しました。
ここから何をしていけば良いのだろう?
まずは息子にどんな進路を選んでも良いんだよと伝えよう。
どんな道だって選べるよと。
君にはその能力もあるよと。
たとえ時間がかかっても、息子が息子のタイミングで決めていくことを、心から応援しよう。
求められたら応えるけど、それまでは本人の気づきに任せよう。
しばらくして
考え始めるのが遅かったので、今すぐに何が良いか決められない。
だから、入学してからある程度の選択ができる大学を目指したい。
めいっぱい頑張らないと入れないところを目指したい。
入ってから決めることを許してほしい。
息子はそう言いました。
私は、もちろん応援するよと伝えました。
18歳やそこらで、将来を完全に決められなくて当然だよと。
いっぱい考えて良いからねと。
そしてここからが一番険しい道でしたが、主人の、ある意味差別的な、固まった思考をほぐしていかなければなりませんでした。
非常に語弊がある表現ですが、医師以外の職業は認めない、ぐらいの考え方の主人でしたから、それはそれは大変な作業でした。一歩進めば五歩後退するような毎日でした。
詳しいことはまた別の機会に書こうと思いますが、長かったGWの終わり頃、頑なだった主人の心がようやく解放されたと言いますか、和らいだのが分かりました。
ポツリと
「〇〇(息子)の将来、どんな風になるのかな?
楽しみだね。」
と言ったのです。
これは我が家にとって事件でした笑
主人自身も周りの色んな思惑の中で育ってきましたから、現在もなお、無意識に縛られているのだと思います。
子供は産まれながらにして、自分で正しく育っていく力を備えているのに、親や周りが手を出そうとするからわざわざ苦しくさせているのだと、つくづく思いました。
その後息子に、パパがあなたの未来が楽しみだ、って言ってたよと伝えた時
息子は文字通り、今まで見たことのない本当に嬉しそうな笑顔を見せてくれました。
ただただありのままを受け入れて欲しかったんだなと、応援して欲しかったんだなと、その笑顔が教えてくれました。
人って、自分自身の為だけに頑張るって本当に難しいことだと思います。
最初は自分の為に始めたことでも、誰かが応援してくれるから、誰かが喜んでくれるから、そういった周りの思いが最後の一押しとなり、限界を超えていけるんですよね。
昨日、息子は志望する大学の学祭に初めて足を運びました。
学校と塾の合間の数時間でしたが、最高峰の知が結集したその場所は、随分と刺激的な時間を過ごさせてくれたようです。
帰宅するなり、「絶対入るから!」と宣言。
ようやく。
ようやく我が家に受験生がやってきました。