一浪時の一次試験は、もう会場へは付き添いませんでした。
ほとんどが前年受験で訪れたことのある会場でしたしね笑
そして1年間の浪人を経て、娘はしっかりと受験生としての逞しさを身につけていました。
一つ試験を受けたら、帰りに予備校に寄って報告をし次の試験へのアドバイスを受け、また試験会場に向かう。
この当たり前に思えるようなことを当たり前にする。
それこそが試験期間中に重要なことでした。
次から次へと試験が続く私立医受験は、試験中に一次の合否がどんどん発表になり、どんな結果であれ翌日の試験を受けに行かなければ先はないのです。
二次に進めたなら、面接対策の直前講習を試験の合間に受け、二次を受け、また一次を受け、合否を知る。
鋼のメンタルが必要なのか、鈍感力がモノを言うのか分かりませんが、とにかく立ち止まることなく次へ次へとすすまなければならない。
娘より遥かに優秀で、マンスリーテストも常に上位に名を連ねていたクラスメイトが、一番最初に(お試しで)受けた東京受験もできる地方の大学に失敗してしまい、そのまま立て直すことができずにその後の試験を一校も受けられず受験を終えてしまったと後から聞きました。
何かひとつのきっかけで、娘も同じ道を辿ったのかもしれない。
綱渡りのような日々でした。
実際、娘は一次試験はクリアするもののなぜか補欠合格ばかりで正規合格がなかなか貰えないままで、「補欠コレクター」と自分を揶揄し、すれすれの精神状態でした。
比較的入りやすいと言われている前半の大学で補欠しか貰えないのだから、後半の難易度が高いと言われる大学に受かるはずがない、そう思ってしまうのも無理はありませんでした。
でも、後半には娘の第一志望の大学が控えていましたから、なんとか気持ちを繋ぐよう細心の注意を払って娘と向き合っていました。
なのに。
主人が爆弾を落としました。
「ここまで補欠しか取れてないんだから、〇〇大なんて受かるわけがない。
〇〇大の後に試験がある△△大のほうが可能性があるんだから、〇〇大の試験なんか受ける必要ない!!!
△△大の対策に集中しなさい!!!」
絶句。
主人は主人なりに娘のことを考えての言葉だったのでしょうけれど。
確かにこの時点で確実な合格は一つも無かったのだけれど。
あまりに酷い。
でもここで言い返して家庭の雰囲気が最悪になるのは何が何でも避けなければならないと思い、
「受験に関して一切何もしてこなかったあなたが、結果だけ見て勝手なこと言ってんじゃないわよ!」
と出掛かった言葉を飲み込んで
「パパは本当に心配してくれてるから言ってくれてるんだよ。だから良く考えようね。」
と娘を慰め、その場を納めました。
母は女優であれ。
正に。
主人はあんなことを言いましたが娘には悔いのない受験をして欲しかったので、受けるか受けないかは自分で決めるように伝えました。
ほんの少し考え、やっぱり一番行きたい大学を受けることなく諦めるなんてできないと腹を括ったようでした。そこを目指して1年間やってきたんですもの。
主人の意見は最後まで変わらなかったけれど。
結果として娘は、主人が受かるわけないから受けるなと言った第一志望の大学に、受験者数2900人中上位35名に入り、特待生として合格しました。
後半に受けた旧設3校は全て正規合格で、前半の補欠合格だった3校もみな繰り上げ合格し、受けた大学全てから合格をいただいて受験を終えました。
娘は女子で、浪人で、コネ無しといういわゆる三重苦の受験でした。
予備校の先生方の指導を信じ、ただただ従って、授業で使ったテキストと弱点対策のために課題として出していただいた300枚程度のプリント以外、他の参考書や問題集などに一切手をつけることなく合格をいただくことができました。
(娘が通った予備校についてお知りになりたい方はメッセージでご連絡くださればお知らせいたします。渋谷にある予備校です)
娘の受験結果から見て、私立医の偏差値はあてにならない、これは紛れもない事実です。
あのとき諦めていたら。
主人の意見を素直に聞くような娘だったら。
私たち家族は違った今日を送ることになっていたでしょう。
浪人時にかかった費用は特待生として浮いた金額でさっさと返してしまった娘ですが、今後すんなりと卒業できるかどうかはまだまだ分からないので油断禁物です。
以前の記事にも書きましたが、やはり現役で入った同期と一浪が必要だった娘との間には、どうにも越えられない学力と自己管理能力の差があります。
でも娘は浪人を通して、1年間全身全霊で医学部を目指したという経験と、自分のダメな部分から目をそらさない謙虚さを身につけました。
それは娘にとって本当にかけがえのない財産で、私は浪人させて良かったと心から思っています。娘の成長に必要な1年間でした。
一年足踏みすればまた親からの借金生活が始まってしまうし、今の同期ととても良い関係を築けているので、何がなんでもストレートで国試まで走り抜けたいと思っているようです。
娘の受験を通して学んだこと。
本人が目覚めるしかない。
諦めたらそこで終わり。
親のできることなんて、無いに等しいなって。
受験に限らずですけれどね。
おしまい。